色覚異常の子を持つ母親の本音『クレパスの色』考察⑤


色覚異常の子供を持つ母親は、本人と同じぐらいにこの問題に悩んでいます。

その悩みは当事者にしかわかりません。

『クレパスの色が見分けられますか』では母親たちの心の声も取り上げています。

私は本当に子供を連れて死のうかなと思ったんです。私の住んでいるところは田舎で、よく何々家とかいうのを「あそこのマキは」という言い方をするんです。どういう意味かは分からないんですが、言っていれば血筋ですね。「あそこは結核血統だ」とか、まだそういうことをお年寄りが言う土地柄なんです。そういうところで育ってきているから、お医者さんに遺伝ですよと言われた時は、”ああ、もうこの子はお嫁さんは来ないな”と思いました。娘もお嫁さんには行けないなと思ったし、本当にもう死のうかと思いました。

・・・・(略)

その頃は、色覚異常についての知識というのが全然なかったから、”なんで、色覚異常の人だけが、こんなに制限されなくてはいけないんだ、世の中は間違っている”っていう、世の中を呪う気持ちでいっぱいでした。で、そういうことは日本だけだっていうし、お金があったら、この子を連れてどこかの国へ移住しようかとか、そういうことまで考えていました。何年か前に、「子どもを道連れに親子心中を図ったという事件がありましたけれど、なんでもない人からみたら、「なんで色覚異常で、死ななくてはならないのだろう」って思うかもしれないけど、私は分かるような気がします。

『クレパスの色が見分けられますか』p84-85

色覚異常を持つ母親の声は悲痛です。

母と子の繋がりは強い。また色覚異常の遺伝は100%、母親から子供への遺伝となっています。誤解している人もいますが、父親が色盲でも男の子へ直接は遺伝しません。

色覚障害の遺伝と子供の産み分けについて

そういう意味でも母親が自責の念に駆られるのも無理からぬことだと思います。

また現代では少なくなってきましたが、日本の田舎における血統主義や差別的な慣習、ひいては社会全体の根底にある同調圧力の影響もあります。

さらに色覚異常への無理解と隠蔽体質があいまって色覚異常者は肩身の狭い思いをして来たのも事実です。

私自身それは感じていました。なかなか自分が色覚異常だとカミングアウトできないのも、その独特の空気のせいだと言えます。

「色覚異常」が原因で死のうと思った人は多いだろうと推察されます。実際に自殺した人もいるのではないでしょうか。

色覚異常は、進学、就職、結婚という人生において、もっとも重要な場面で足枷になっているのです。

どんなに奇麗ごとを言っても、人がいい学校に入ろうとするのはより良い就職口にありつくためであり、それはその後の幸せな結婚生活を旦保してくれるからではないでしょうか。

どうして「たいしたことない」などと笑い飛ばせようか?

昔に比べ、色覚異常の理解は深まったか、それとも後退したかは判然としません。

2003年以降、学校での色覚検査がなくなった事と、大学入試における色覚制限がなくなった事により、むしろ色覚異常の問題がより表面化しにくくなったと考えることもできるのです。

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