色盲の夫の妻達の告白/仕事と生活『クレパスの色』考察④


『クレパスの色が見分けられますか?』の本の中には、色覚異常者の夫を持つ妻である女性達の話が掲載されています。

実体験に基づいたとても貴重な内容なので、一部紹介します。

夫の話を聞いていると、かなり色がわかるんです。例えば、「あの色は何色と何色を混ぜたような色だろう」と言うんです。それは、わたしなんかは考えたこともなかったような色で、あいまいな色ですね。”そう言われていみればそうかな。多分そうなんだろうな”という感じです。ですからそんなに苦労していないのかな、と思う半面、そういう話をし始めると一時間でも二時間でも続くんです。

『クレパスの色が見分けられますか』p79

正常な色覚を持った人間は、見たままの色をそのまま感じる。だから色の意味やそれがどんな色かなんて考えない。

他人が着ている服をそのまま

『その服、素敵な色ね』

と言える。

私にはその一言が口に出せない。

そしてあれはどんな色なのかと頭の中で想像する。

オリーブ色だと言われれば、自分の色に関する知識を総動員して「暗い黄色の色かな」言うかもしれない。

何故なら、私は知識として「オリーブ色」をそう頭にインプットしているからだ。

自分の目にそう見えているからではない。

実はオリーブ色と黄緑色の区別が私にはまったくつかない。しかし言葉で色の知識を披歴することによって相手に「自分は色が見えているのだ」という事をアピールできる。

男性は女性に弱みを見せたがらないものだ。

結婚する前のことですが、その頃友達がみなピンクの口紅をつけていて、私もつけたんですが、会うと不機嫌なんです。「似合わないから、やめろ」というわけなんですね。・・・(略)

「ピンクの口紅をつけると、青く見えて気持ちが悪いからやめてくれ」と言ったんです。

『クレパスの色が見分けられますか』p80

そうだった。私も女性がピンクの口紅をつけると、青紫に見えてオバケのように感じたのだった。

ただし、私は当時はこういうファッションなんだろうとどこかで納得していた。自分が色盲だからとは思わなかった。

色覚異常の男性と結婚し、その後、離婚した女性の話は身につまされる。

たとえば、いつも背広など買うときはお姑さんに一緒に行ってもらったりして、時分で洋服を買わないんです。そういうことを私は、”なによ、大人のくせにマザコンね”という言葉で、彼をすごくばかにしていたんです。でも、彼はそう言われても何一つ返答しませんでした。色が分からないとは言いませんでした。

『クレパスの色が見分けられますか』p81-82

私も私服のジーンズやシャツを選ぶ時は自分で選ぶが、スーツは選べない。そのことはこちらで書いた。

カジュアルウェアなら少々の色間違いでも「個性」で押し通せるが、フォーマルの服選びは失敗できないので、他人に頼るしかない。

学生時代から付き合いがあったようで、女性の話は彼の進路についても語っている。

大学も理数系が得意だったので、工業高校に入るために進学校で勉強していたのですが、なぜか行かなかったのです。自分では経済的に無理があったから行かなかったんだと言っていましたが、今ではそうでなかったのだということがよくわかります。おそらく高校時代にも色覚異常がわかったんだと思います。そして電機会社へ事務員として入社したんですが、その当時カラーテレビの全盛期でカラーテレビの技術員に抜擢されて、東京まで研修に行ったらしんですが、帰ってから黙って会社を辞めているんです。

1990年以前は、色覚異常だと理系の大学はかなり厳しかった。

入試さえ受けることは叶わない時代なのだ。理系を諦める時、その理由は他人には言えなかったのだろう。

私も高3の秋に突然「文転」宣言した。担任は少し驚いて聞き返した「理数系の方が成績がいいのに何故だ?」と。

私は笑って答えなかった。

・・・女性の話をもう少し引用する。

そういうことがあってから、色々職業を転々として薬のプロンプターなどもやりましたが、おそらく薬の色がわからなかったからだと思いますが、理由を言わずに辞めてしまっている。そして結局、家業の食堂、串かつ専門店をしていたんですが、その商売を継ぐようになってからも、やはりいろいろな色に関するトラブルが付きまとっていました。けれども彼はそれに対して一言も自分は色がわからないとは言わない。魚を仕入れる時も野菜を仕入れる時も、結局は色で見分けなくてはならないんですが、それを分からないとは絶対言わないで、「俺は仕入れなんかには行きたくない」という怠けるという態度になって、それで夫婦喧嘩が絶えなかったんです。

『クレパスの色が見分けられますか』p82

話に出てくる「彼」は、最初の電機会社に事務員として入った。おそらく色覚異常を隠して入社したのだろう。彼は事務員なら色覚異常でも務まると踏んだ。しかしいったん会社に入れば、業務は流動的で、結局は何でもやらされる。色がわからないから技術員がまっとう出来ず、その会社を去る。

その後、職を転々とするが、色盲を隠せば、ほんの些細なことで躓く。「これ何色?」と一言訊けば済む事を訊かない、いや訊けない、ためにまごつく。

仮になんとか業務をこなしても自分の色盲がいつバレるかビクビクしながら仕事を続けなければならない。

そんな仕事が長続きするわけない。

そして自暴自棄になるのだ。

彼はそれでも家業があるだけ運がいいと思う。

私も経験あるのだが、色がわからないと日常のふとした場面で物事の判断が出来ない事がある。それを解決するには自分が色覚異常だと告白しなければいけない。しかしずっとそれを隠し続けていた場合、それが素直に出来ない。

そして自分の色盲を隠すため、いい加減な態度を取るようになるのだ。それは「いい加減な自分」を演じているだけだ。そうすれば色の間違いもそれを理由に出来る。

周囲はまさかそんな理由があるとは思っていもいないから、混乱する。そして、そういう人間だと当人の評価を下がるだけになる。

色覚異常は隠すべきではない。自分にも他人にも正直になるべきだ。そうすれば必ずうまく行くだろう。

これは私が「彼」と同じだから自省を込めて言うのだ。

もし、若い社会人で自分の色覚異常を隠して仕事をしているのなら、思い切って、自分のハンディキャップを仲間に打ち明けてみてはどうか。

誰1人、あなたを軽蔑しないはずだ。

それどころか、仲間から厚い信頼を得られ、仕事もきっとうまく行くだろうと思う。

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