電気刺激による色盲治療は効果ある『クレパスの色』考察②


『クレパスの色が見分けられますか』では電気刺激による色覚異常の治療の事が述べられています。

では、色覚異常の人の色覚を向上させるような治療の可能性はホントにあるのでしょうか。

電気生理学の本川弘一氏(東北大)は、「色盲色弱は赤または緑を感ずる仕組みが発育不全か、または機能低下を示しているだけの状態であるから、弱いものを選択的に、異なった周波数の電流で刺激して発育を促進しようという試みは、科学的に間違っていないと思う」といって、電気治療の可能性を一九六四年にすでに示唆しています。

眼科医の桑島治三郎氏(東北大名誉教授)は、「色覚異常遺伝子が色覚の発達(白黒→青黄→青黄と赤緑)を阻害する作用によって起こる」のならば、色覚の発達形成がほかのものと違って十年もかかってゆっくりと進むことから、適当な時期に、色細胞の順調な機能発達や活性化を促進する適当な刺激を与えれば、色覚の向上や治療の可能性はあるのではと問いかけています(宮城県医師会報一九八九・六)。

一九六六年の日本眼科学会総会では、色覚異常の治療についてのテーマがとりあげられ、当時の関亮助教授(東京医大、その後独協医大教授)は本川教授の理論から今村勤氏(関西大学)らによって開発された、選択周波刺激訓練器(サンビスタ)による治療と、東洋医学の良導絡による顔面皮膚の通電刺激法とが治療効果がある程度認められる場合があると発表し、治療条件の改善によっては効果の向上も期待できそうだとしました。そして、それまで不治といわれたこの疾患に、「一縷の光明が訪れた」と述べて、多くの追試者によって確認されるよう望むと締めくくりました。

この発表に対して、効果の判定に反対や疑問を抱く意見が出され、結局その後その主張は無視され、追試者もほとんどあらわれませんでした。

『クレパスの色が見分けられますか』p67ー69

日本では1966年から色覚異常の電気刺激治療について研究され、一部の眼科医もその効果を認めていたのは驚きだ。

治療法の1つは、今村勤氏(関西大学)の開発した選択周波刺激訓練器

もう1つは、東洋医学の良導絡による顔面皮膚の通電刺激法だ。

この2つの方法は、関亮助教授(東京医大、その後独協医大教授)が色盲治療に効果があると50年も前に発表している。

ところが、事実上、その発表は学会では無視されたようだ。

「色盲は治らない」という定説は覆すことは出来なかった。学会の同調圧力により葬り去られたというわけだ。

もし、「電気刺激による色覚治療の可能性」を追及し、その後に多くの医師が追試を行っていたら、状況は変わっていたかもしれないと個人的には思う。

さて、この『クレパスの色』には私が和同会で受けた通電療法についても書かれている。

一九八〇年になると、山田武敏氏による和同会が、そこで開発したJPJC法という「治療」を本格的に始めました。JPJC法というのは、良導絡やサンビスタによる通電刺激療法にヒントを得ながら、特殊な波形のパルスを皮膚上から通電して、生理機能を向上しようとするものです。このJPJC法は多数の人に試みられています。ただ、1人の人に長時間、百回以上も治療することで、そのパルスが長い間には網膜剥離を起こす可能性もなきにしもあらずで、十分注意が必要とする眼科医もいます。

『クレパスの色が見分けられますか』p69ー70

私が体験した和同会による通電治療はJPJC法というものだった。(ジャストポイント、ジャストシステムの略らしい)

和同会の宣伝では治療実績に10万人とか20万人とかあったが、少なくとも数万人以上の人が治療を試みたと思う。

私は効果なかったが、その中で色覚向上の効果を得た人間もいたのも事実。

和同会はその膨大な一種の治験データを抱えたまま消えてしまった。そして医学界が和同会の事に触れることは決してなかった。

2000年前後に和同会はなくなったのだが、色覚異常の治療の話はまるで存在しなかったように話題にされなくなった。

その背景には、朝日新聞による和同会叩きがあったのが大きいと思う。

朝日新聞は和同会がやっている色盲治療について『まやかし療法』というスクープ記事を書いたのだ。

それに対して和同会側が裁判を起こし争っていた。

私は実はこの朝日と和同会の裁判の事がきっかけで、色覚異常の治療について知ったのである。

実家は朝日新聞を取っていて、中学生の頃、この朝日と和同会の裁判記事を読んだ。(85年頃の話か?)

記事の詳細は覚えていないが、大まかな内容は記憶している。

それは

「高裁において朝日新聞が和同会に勝訴した」

というものだった。

一見すると、朝日新聞の記事を裁判所が認めたのだから、和同会の治療法はやはりまやかしだったのか、と思えるが、ポイントは「高裁において」の記述。

この裁判、実は一裁の地裁においては和同会側が勝訴、高裁、最高裁では朝日新聞の勝訴となっている。

もし、和同会が本当に詐欺商法をやっていたら地裁で勝てるわけがないのではないか、と私は子供心に思った。

それがきっかっけで、もし東京に行く機会があったらここに通ってみようという気になったのだ。

この朝日の『まやかし療法』記事の後、色覚異常の治療について、学会が及び腰になり、治療の効果を肯定していた眼科医も口を閉ざしたように思う。

朝日新聞はこの和同会との裁判の後、色覚異常は大きな障害ではなく差別だという論調に持っていき、色覚異常に関する特集を組むようになった。例えば小堺一機さんへのインタビュー(小堺さんは色弱)や色覚異常で医師になった人の連載記事などを載せた。朝日が言わんとするのは色覚異常は障害ではなく個性だという趣旨だった。

この朝日の報道には功罪があると思う。

罪の方は、色覚異常の治療の可能性を潰した事と、もう1つは学校での色覚検査の全廃する方向に持っていたことだ。その弊害はこちらで書いた。

功の方は、大学入試での色覚制限がなくなった事と、若干ではあるが就職への門戸が開けた事だろう。

朝日新聞の社会への影響力は絶大なのである。

もちろん和同会についても功罪はある。

過剰な宣伝文句(100%治る)という触れ込みとけっして安くない治療費。やってくる患者の「治したい」という気持ちにつけ込むような料金システムになっていたという感はぬぐえない。(私自身学生の身ながら30万円ぐらいは使った)

それでもと思う。和同会の色覚異常の治療について、医学界がもっと真摯な目を向けていたら、大きな変化をもたらしたかもしれない。

和同会での通電治療は、見たところさほど難しい装置ではなかった。もし、あの治療による効果を医学界が認め、日本中の眼科医院に設置すれば、色覚異常の子供が気軽に通電治療を試みる事が出来た。そんな世の中になっていたかもしれない。

通電治療による色覚異常の治療が現在されていない状況は非常に残念だと個人的には思う。

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